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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

巡り会えない味

 

 私は生まれた日から病院と長く関わりがある人間だ。そこには今も通っている。もう三十年以上の付き合いになろうか。幼い頃、病院の順番待ちがてら、地下の喫茶店に行くのが我が家の定番であった。その喫茶店は洋画が壁にあり、高そうな花瓶に生けられた花々が「私を見て!」と言わんばかりに堂々していた。母や私が頼むのは、決まってモーニングセットだった。綺麗に色づいた野菜がこんもりと載ったサラダ、半分に切った半熟のゆで玉子、そして外はサクサク、中はふんわりとした分厚い食パンが二枚。サラダにかけるドレッシングは和風と洋風で凝っていて、子どもながらにときめいた。食パンにもジャムなどがかけられるサービスがあった。私たち母娘が愛用したのは、手作りで色が濃い目の蜂蜜シロップである。なんの花の蜂蜜かは、未だにわからない。温かい食パンに蜂蜜シロップをジュ~ッとかけ、これでもかと口を開きつつ頬張る。一口噛むと、濃密で深い味わいの蜂蜜シロップの味と、噛むたびに、サクッサクッと音が鳴る食パンの甘い味が広がった。とても美味しく、当時の一番の贅沢だったと改めて感じた。十年以上が経った頃、その喫茶店は閉店してしまった。もう二度と巡り会えない味になったかと思うと、残念でならない。……あぁ、食べたい。

 

(完)

 

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