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ミツバチと共に90年――

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ミツバチの一撃

渡辺夢子

 

小学生の頃、居間でゴロゴロしていたら、太ももに衝撃の痛みが走った。驚いてその痛みが走った箇所を見ると、小さなミツバチが潰れていた。私は知らぬ間に、ミツバチを潰してしまったのである。小さな小さなミツバチであったが、痛みは相当なもので、泣きながら台所にいる母に報告しに行った。母は、
「ミツバチは一度針で刺すと死んでしまうらしいよ。命懸けの一撃なんだから、そりゃ痛いよ。ゴロゴロしてるあんた相手が最後の一撃なんて、ミツバチも可哀想だね。あんた、ミツバチに悪いと思ったなら宿題したり、手伝いちゃんとして、今潰してしまったミツバチの分もちゃんと生きな」と麻婆豆腐を作りながら私に言った。
私はこんなに痛い思いをしたのに説教されたなぁとがっかりしたが、母の言うことにも納得し、その後、とりあえず晩ごはんができるまでしおらしく宿題に取り組んだ。しかしながら、小学生の子供であったのですぐに忘れ、いつもの怠惰な毎日に戻っていったのであるが。
そして、私自身が母になり、子どもとお散歩やら外へのお出かけをするようになると、外界の危険がとても気になるようになった。車の動向に目を光らせ、遊具での遊びにもしっかり付き添い、蚊やその他危険な虫が近づいてこないよう、虫除けスプレーやその他、様々な策を講じるようになった。が、そんな中、ミツバチを見るとなんだか心がほっこりするのと同時に背筋がしゃんとするのである。小さい頃に私に一撃を放ち果てたあのミツバチの思い出が、母の言葉と相まって私にエールを送ってくれているような、一生懸命生きているかと問われているようなそんな心持ちになるのである。
誤って殺してしまったミツバチとはいえ、自分の最期の一撃が1人の人間の心にこんなにも残る一撃になるとは、そのミツバチもつゆとも思わず

あの世で暮らしているだろう。

 

(完)

 

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