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蜂蜜エッセイ応募作品

でっぷりした一匹の蜂

松草 幹濤

 

 私が結婚をしたときには、妻の父、つまり私のお義父さんはすでに亡くなっていた。亡くなった日から、お葬式までの間、お義母さんや妻の周りを、太った一匹の蜂が、刺すでも止まるでもなく、ぶーんと飛んでいたそうだ。妻から、「お父さんは、蜂に生まれ変わったみたい」と聞かされた。お義母さんまで、大真面目にそんなことを言っていた。もちろん、最初は信じてなんかいなかった。
 私が、そんなこともあるのかと思い始めたのは、お彼岸と年末に、妻と一緒にお墓参りに行ってからだ。お線香をあげるとき、必ず、あのでっぷりした蜂が飛んでくる。年末の寒いときにさえ、だ。
 妻に、「国語の教科書に、『冬蜂の死に所なく歩きけり』って俳句があるくらいなのに、冬でも元気に飛んでるね」なんて言うと、「もう死んでるから、関係ないんでしょ」なんて返ってくる。
 蜂が出てくるのにルールがあるらしく、私が単独でお線香上げにいっても、出てこない。妻曰く「お酒が入っていないと気が弱い」んだそうだ。妻が単独で行くと、どこからともなく、律儀に出てくるらしい。
 確信にいたった理由は、大きな夫婦喧嘩をした次の日、どこからともなく現れた、でっぷりした蜂に追いかけ回されてからだ。なんとかことなきを得たが、恐怖の体験だった。
 アシナガ蜂に刺されてからというもの、蜂は恐怖の対象でしかなかった。でも、お義父さんが、蜂になっていると思い始めてから、好戦的な蜂を除いて、蜂を暖かい目でみられるようになった。たまたまその蜂が、様子を見にきたお義父さんだったら、やっつけてしまっては、一大事だ。だからむやみにスプレーなどで殺そうとしなくなった気もする。
 信じられないようで本当の話。世の蜂の中には、人の想像を超えるいきさつを持った蜂が、いるのかもしれない。

 

(完)

 

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