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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

熊になった話

さつき

 

 冬って、気を抜くと風邪を引く。喉が痛くてたまらなくなり、その日の朝食だって、飲み込むたびに憂鬱さが増していくのだ。この喉さえ治れば。そう考えた時、蜂蜜のことを思い出した。蜂蜜は喉に良い!私はそのことを知っていたのだ。
 いつも思いつきで行動する。私はすぐにキッチンの棚という棚を開けて、蜂蜜探しをはじめた。どこだどこだとあちこち開けては閉めての繰り返し。こんなに必死になって蜂蜜を探すなんて、まるで熊だ。やっと見つけた蜂蜜は、結局キッチンでなくダイニングテーブルの上。思いつきの行動をした時はいつもこうだ。
 愛しの蜂蜜、さっそくスプーンの上にたっぷり垂らす。口に入れればゆっくり溶けていく。喉の痛いところに流れるように飲み込むと、蜂蜜の甘さが消毒してくれているような気がした。これはすごいぞ!そしてもう一回、もう一回と何度も蜂蜜を舐めた。3口目からは、喉の痛みを和らげたいからというよりは、甘い蜂蜜をたくさん舐めていたい気持ちの方が強かった。
 こうして熊になった私は、蜂蜜を毎日舐め続けた。喉の痛みは気づいたら治っていて、蜂蜜が本当に効いたのかはわからない。でも、この風邪がきっかけで蜂蜜が大好きになったのだ。

 

(完)

 

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