お釈迦様の仏教説話には、現代なお通用する機智にとんだお話がたくさんありますね。
今日は(財)仏教伝道教会が刊行している「仏教聖典」の中で見つけた、蜂蜜が出てくるこんなお話を紹介したいと思います。
罪を犯して逃げている男が追っ手に追い詰められて、ふと足もとの古井戸に藤蔓(ふじつる)が垂れさがっているのを見つけます。
男はその藤蔓をつたって井戸の中へ降りていきますが、下では毒蛇が口を開けて待っているのが見えました。
行き場をなくした男はそのまま宙ぶらりんになっていましたが、しだいに疲れ、手が抜けそうに痛んできました。
すると、そこに白と黒の二匹のネズミが現われて、藤蔓をかじり始めたからたいへんです!
もはや絶体絶命の危機に見舞われた男でしたが、ふと上を見上げると蜂の巣があり、そこからハチミツの甘い滴がポタポタと口の中へ落ちてきたのです。
その途端、男はうっとりとして、自分の危うい立場をすっかり忘れて、蜂蜜の美味しさに心奪われてしまいました。
―――というお話です。(笑)
なんとも哀れな男だなあと思いますが、実はコレ、筆者も含め誰も逃れることができない人生の本質をあらわしているんですネ。
話の中の「追っ手」や「毒蛇」は自分自身の欲望をあらわし、「古井戸の藤蔓」は人の命、「二匹のネズミ」は歳月を示して、「蜂蜜の滴」は目の前の快楽を指すのだそうです。
こうして考えてみると、人間とはなんと愚かな生き物なのでしょう。(笑)
それにしても、全ての苦しみを忘れさせてしまう象徴にハチミツが用いられるとは、お釈迦様の時代の蜂蜜は、相当魅力があったのでしょうネ。